腰骨が痛い原因とは?
1.デスクワークなどの長時間同一姿勢
パソコンを使う仕事などで長時間椅子に座っていることで、姿勢を支えるための腰骨や腰の筋肉に負担がかかり、それがなんらかのきっかけで筋線維を傷つけて炎症を起こし痛みが出ることがあります。ぎっくり腰などは、肉体労働者よりもかえってデスクワークなどの方に多い傾向があります。
2.冷え
体が冷えることで背中や腰の筋肉が硬くなり、そうして収縮した筋肉が急な外力によって引っ張られることによって、筋線維や関節を痛めてしまうケースです。
3.血行不良
人間の体は、血液が酸素と栄養を体の各部に届けることによって、細胞分裂や修復作業を行い、疲労の回復や怪我の治癒をしていきます。その血液の循環が悪くなることによって腰部に痛みが表れるケースです。
4.外傷
転んで腰を強く打ったり、硬いものがぶつかったりした場合に見られます。特に高齢者の場合は、転倒により腰椎の棘突起が圧迫され、骨折を起こす場合があります。
5.軟骨の磨耗
加齢により腰椎と腰椎の間のクッション(椎間板)が磨り減って痛みを生じる場合です。また、骨粗しょう症といって、加齢によって骨が弱くなり、痛みが生じるケースもあります。
若い人の場合でも、学生時代にバスケットボールやバレーボールなどの、繰り返し跳躍をするスポーツをしていた人に見られることもあります。
6.生理
生理痛で痛くなるケースです。生理不順や子宮内膜症、卵巣脳腫など、婦人科系の疾患を持っている人は、腸腰筋という腰骨を支えるインナーマッスルが固い人が多いようです。そのために生理中の子宮の収縮に伴って痛みが生じてしまいます。
7.運動
バレーボールやバスケットボールなど、特に跳躍を伴う運動を繰り返すことにより腰骨に負担がかかって痛みが表れるケースです。腰椎すべり症や腰椎分離症などが多く見られる傾向があるようです。
8.内科系の疾患
胃や肝臓、腎臓などの疾患で腰痛が現れることがあります。臓器周辺の痛みが腰にまで響いたり、腰の神経を圧迫したり、脳が腰の痛みと勘違いしたりして起こります。
特徴としては、安静にしていても痛くて、痛みが楽になる姿勢が見つからない、寝ている間も痛む、発熱や嘔吐、下痢などを伴う、食前または食後に痛む治した場合は内科系の疾患を疑います。
9.骨自体の変形
腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症、変形性腰椎症や腰椎分離症・すべり症、脊柱側わん症など、骨自体に変形が生じて起こるケースです。
腰が痛いときに考えられる病気や疾患とは?
1.筋・筋膜性の腰痛
筋・筋膜性の腰痛は筋性腰痛症の、すなわち、腰部の筋線維になんらかの原因で傷が生じ、炎症を起こすことによって痛みが生じている状態を言います。
はじめは腰の周辺がなんとなく重い感じがしたり、疲れやだるさを感じます。その状態を放置していると、次第に日常生活での動作に支障が出たり、ついにはぎっくり腰になる可能性もあります。
レントゲンで見ても骨に異常が見られることは少なく、筋線維の走行に沿って強いハリや筋張を生じているケースが多いです。ごく簡単に言うと、腰の筋肉の疲労による症状といえます。野球やゴルフなどの体をねじる動作や、重いものを持ち上げたりする時の負荷が腰に掛かり、それが限界を超えてくる(疲労が回復を上回る)場合に症状として表れてきます。
2.椎間関節性の腰痛
腰椎(腰の骨)と腰椎を結んでいる関節部に、重いものを持ち上げるなどの急激な負担がかかった時に、関節包や靭帯が引っ張られて、捻挫状を起こして炎症が生じ、痛みが表れる場合です。
特徴としては、椎間関節部の圧痛、動作に伴う痛み、腰の下のほう(骨盤に近い部分)の痛みなどがあり、多くの場合は腰の右側だけとか、左側だけといった風に、片側にだけ表れるようです。
3.婦人科系の疾患
生理中や生理前に腰痛がひどくなる場合は、生理不順や子宮内膜症、子宮筋腫や卵巣膿腫などの婦人科系の疾患が疑われることがあります。素人判断は危険なので、必ず婦人かなどを受診するようにしましょう。
子宮筋腫の場合は、生理時に子宮内膜を排出するために子宮が収縮するのを筋腫が邪魔をすることによって痛みを生じます。鈍痛や不正出血、貧血を伴うことがあります。
子宮内膜症の場合は、着床しなかった子宮内膜が排出しきらず残ってしまうことで、次回の生理時に差し込むような腰痛がでたり、いつもよりも生理痛が強く表れたりします。
卵巣のう腫は、子宮内に良性の腫瘍ができる症状ですが、大きくなってこないと自覚症状が現れることはありません。しかし大きくなってくると、腹壁が引っ張られることによって腰痛が出ることがあります。
4.消化器系の疾患
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、肝炎や肝硬変、肝臓がん、膵炎や膵臓がん、胆のう炎や胆石症、大腸がんなどによって腰に痛みが出るケースがあります。原因不明の腰痛が続く場合や、風邪などの症状を伴う場合は自己判断せずに直ちに専門の病院を受診しましょう。
5.椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアのうち、特に腰に起きるものを腰部椎間板ヘルニアと言います。腰椎と腰椎の間にある椎間板というクッションが圧迫され、椎間板内から髄核が飛び出して神経を圧迫することによって起きる症状です。特に第4腰椎と第5腰椎の間、および第5腰椎と第1仙椎の間に好発し、場合によっては下肢の痛みや痺れを伴うことがあります。
6.急性腰痛症
重いものを急に持ち上げたり、勢いをつけて立ち上がったり振り返ったり、または、スポーツで急な動作をした際に起こったりします。ぎっくり腰というと分かりやすいですよね。
症状の程度はさまざまで、ちょっと足を引きずったり腰をかばう程度のものから、全く動けなくなってトイレにも這っていくほどの重症までいろいろです。
7.脊柱管狭窄症
背骨の中の神経が通る管=脊柱管が狭くなり圧迫されることにより起こります。代表的な症状は足の痺れと間欠跛行(10分ほど歩くと歩けなくなるが、しばらく休むとまた歩けるようになる)です。
特徴としては体をそらすと痛みが増幅され、前かがみになると痛みが緩和します。高齢者に多く見られますが、若い頃に腰を痛めたことのある人や、腰痛を繰り返している人に好発する傾向があるようです。
8.腰椎分離症・すべり症
スポーツをする10代の若者によく見られる症状で、特にバスケットボールやバレーボールなどの、反復して跳躍するといった動作を伴うスポーツ選手に多く見られます。
腰椎の棘突起が折れてしまうのですが、ほとんどの場合は重篤な症状に至ることはないようです。また、中年以降に発症する場合は骨折を伴わないことがほとんどのようです。
9.更年期障害
特に女性の場合に、閉経に伴って女性ホルモンが減少すると、カルシウムの不足が起こり、腰痛が現れることがあります。女性ホルモンはカルシウムを作り、骨を丈夫にする作用があるためだといわれています。
腰骨が痛いときの治療法と対策
1.冷却
ズキズキと拍動に伴うように脈打つような痛みがある、炎症の初期段階では冷やすのが有効です。氷で直接冷やしたり、湿布を貼ったりします。通常は1日、長くても2日が経過したら温める治療に切り替えるのが一般的です。
2.骨盤ベルト
受傷直後の激しい腰の痛みや、動かす時に痛みがある場合は、腰痛帯と呼ばれるバンドや骨盤ベルトで固定してサポートします。痛みの軽減効果と安心感という2つのメリットがあります。
3.保温
炎症の初期段階を終えた場合や、デスクワークや冷えからくる慢性の腰痛の場合は温めることが大事です。血行を促進し、腰部の栄養状態を改善することで、症状の緩和が期待できます。
4.入浴
体にとって、冷やしていい局面というのはほとんどありません(例外は骨折や受傷直後の炎症初期段階)。それ以外は温めてあげるのが効果的です。
特に入浴は全身の血行を促進するだけでなく、リラクゼーション効果によって副交感神経の働きを優位にし、結果として症状の回復が早まることが期待できます。
5.睡眠&休養
体の回復にとって睡眠に勝る休養はありません。体は寝ている間に修復が進みますので、なるべく起床後14時間経ったら部屋の明かりを落として、目を興奮させないようにして、温かくして休みましょう。
6.運動
適度な運動は体の血行を促進し、全身に栄養を行き渡らせ、回復機能を高めてくれます。特にウォーキングはおススメです。足は第2の心臓とも言われるので、ふくらはぎや太ももを刺激することで、心臓へ血液を送り返す働きをサポートすることが可能です。
運動する時間がないという人は、わざわざ時間を割かなくてもいいので、通勤時に使っているエスカレーターを階段にするとか、一駅前で降りて歩いて帰るなど、日常のルーティンを少し工夫してあげるとよいでしょう。
7.ストレッチ
運動と同じく、ストレッチングも腰痛予防に効果があります。腰痛が出てからやるのではなく、あくまでも予防なので、痛いときには無理をしないで下さいね。
特に腰痛に有効なストレッチポイントは、ハムストリングス(太ももの裏)、腸腰筋(おなか側の腰の筋肉)、殿筋群(おしりの筋肉)です。特に腸腰筋は女性の場合、生理痛の軽減にもつながるケースもありますのでぜひやってみてくださいね。
腰が痛いときは何科に行くべき?
1.整形外科を受診する
明白な受傷起点(怪我をした原因)がある場合はもちろん、とりあえず腰に痛みがある場合は、まず整形外科に行って各種検査を行い、痛みの原因を特定することが大事です。
徒手検査やレントゲン、それでも原因が分からない場合はCTスキャンやMRI検査を行い、原因が骨にあるのか、それとも靭帯なのか、筋肉や腱なのかを特定した上で治療を行うと効果的です。
2.婦人科を受診する
腰痛の治療をしても治らない場合や、生理痛、生理不順がある場合、および生理に伴って痛みが増幅する場合などは、婦人科を受診します。
特に若い女性などに見られるのですが、恥ずかしがって受診を避けることで、気が付いた時には症状が悪化していたというケースもよくあるので、特に上記のような症状が出ている方は定期的な検診がおすすめです。
3.内科を受診する
症状があまりにも長く続く場合や、腰痛の治療で改善しない場合、または下痢や嘔吐、発熱などを伴う場合は自己判断せずに速やかに病院を受診するようにしましょう。特に腰痛の治療で効果が上がらない場合は、内科系の疾患が疑われる可能性もあります。
まとめ
腰骨が痛いときの原因や病気の可能性について説明してきましたが、いかがだったでしょうか?腰痛の原因は病院で検査してもその2割程度しか分からないといわれています。
それだけに、日常生活から腰痛にならないように予防していくことが大事だといえますよね。それに腰痛予防は生活習慣病など、すべての病気の予防にもつながります。若いからと油断せず、また年だからと諦めずに取り組んでくださいね。