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股関節脱臼とは?乳児健診などで見つかりやすい?大人も注意!整復などの4つの治療や後遺症の症状や予防法など詳しく説明します

股関節がずれたり外れたりする、股関節脱臼。中でも生まれて間もない赤ちゃんに発症する「先天性股関節脱臼」は、直さずにおくと成長してから障害が出ることもあります。早期発見、早期治療のために、先天性股関節脱臼の原因、症状、治療、予防などについて説明します。



先天性股関節脱臼のすべて

先天性股関節脱臼とは、赤ちゃんの太ももの付け根の関節である股関節が、骨盤からずれたり、外れてしまったりしている状態をいいます。

かつては、歩き始めてからでなければ見つけることが難しかったこともあり、治療の難しい病気と考えられ、日本での発生率は百人に数人という高い割合だったようです。

しかし、最近は股関節検診を行うことで、早期発見が可能となり、発症の割合は、約1000人に2~3人くらいの頻度といわれています。

ただし、きちんと治療されずにそのまま大きくなると、歩行などに障害が出てくることもありますから、早期に発見し、治療することが大切です。

先天性股関節脱臼とは?

発症は乳・幼児期に

先天性股関節脱臼は読んで字のごとく、赤ちゃんの股関節が先天的に脱臼してしまっている状態のことを言います。ただ、実際には股関節脱臼をしやすい状態で生まれた赤ちゃんに、外力などが加わることによって脱臼する疾患のことを言います。

多くの場合は3~6ケ月の乳児検診で発見されますが、ごく軽い場合は幼児期には症状がほとんどないため、気づかずに放置されてしまうこともあります。

先天性股関節脱臼に気づかず、治療しないまま大きくなると、思春期になって痛みを覚えたり、脚を引きずるように歩いたり、疲れやすいなどの障害が出てくる恐れがあります。できるだけ早期に発見されることがベストですから、乳児検診は必ず受けるようにしましょう。ちなみに、先天性股関節脱臼が見られる場合、高齢化してからかなりの確率で変形性股関節症を発症すると言われています。

女の子に多い病気

先天性股関節脱臼が発症する率は圧倒的に女の子に多くなっていて、男の子の約10倍の頻度で起きています。なぜ女の子に多いのか、その原因はまだよくわかっていないようですが、生まれつきやホルモンの関係、遺伝子、子宮内での環境、生まれてからの要因などいろいろ考えられるようですが、まだ解明されていないことも多いようです。

1つだけの原因で起きるのではなく、これらの要素が複合することで発症しているのではないかと考えられているようです。

9割が後天的なもの

先天性股関節脱臼には、「先天性」ということばがついていますが、先述した通り、実際には生まれた時に脱臼しているというケースは少なく、脱臼をしやすい状態で生まれてきた赤ちゃんの股関節に何らかの外力などが加わることによって、股関節を脱臼すると言われています。

そのため、最近では、欧米などでは先天性ではなく「発育性」という言葉を用いて、「発育性股関節形成不全」という疾患名で呼んでいるそうです。

先天性股関節脱臼の種類

赤ちゃんがなりやすい股関節脱臼には、股関節完全脱臼・股関節亜脱臼・臼蓋形成不全の3つのタイプがあります。

股関節完全脱臼

文字通り、骨盤から大腿骨の骨頭が完全に外れてしまっている状態です。股関節がずれてしまったり、関節から大腿部の関節が外れてしまうものです。

本来、人間の体は、簡単には股関節が外れないようにできているものです。しかし赤ちゃんは股関節の形成が未発達なため、おむつを交換する時などに股関節に負担がかかってしまった場合、脱臼してしまうことがあるのです。

赤ちゃんの股関節は、そもそも脱臼しやすい特徴があるということを覚えておきましょう。

亜脱臼

関節の軟骨同士の接触は保たれていますが、肢の位置によってはきちんと収まらなくなるような状態です。一言でいえば、まだ外れてはいないけれど、外れかかっている状態といえます。

非常に不安定な状況ですから、何かの拍子に完全脱臼してしまう恐れは十分にあります。発見したら、放置せずにしっかり治す必要があります。

臼蓋(きゅうがい)形成不全

股関節には、大腿骨を支える股関節の屋根に当たる臼蓋という受け皿のような場所がありますが、この部分の発育がが順調ではない場合に、大腿骨頭がしっかり股関節の中に納まることができません。こうした大腿骨と臼蓋がうまくかみ合わない障害を臼蓋形成不全といいます。

股関節のなかに大腿骨頭がしっかりはまらないために、関節が摩耗したり、脱臼になってしまう要素を抱えた状態ということができます。

先天性股関節脱臼の症状のチェックポイント

生後3~4か月のうちに発見を

先天性股関節脱臼は、股関節の状態が柔らかく、治りやすい生後7か月頃までに発見・治療することがベストです。しかし、生まれてすぐの赤ちゃんでは、脱臼しているかどうかはっきりしておらず、2~3か月後に明らかになってくるという例も少なくないようです。

そのため、発見の時期としては、症状がはっきりしてくる3か月検診のあたりが見逃しが少ないといわれています。生後34か月検診で股関節に関しての指摘があった場合などは、すぐに検査を受けるべきでしょう。ようすを見るなどということはせずに、直ちに受けるようにすることが重要です。

検診での指摘がなくても、できればエコーでのチェックを受けておくと安心ですが、費用は自費となります。

先天性股関節脱臼 10のチェック項目

股関節が脱臼していても、赤ちゃん自身には痛みなどの自覚症状はないため、周囲の大人がチェックしてあげる必要があります。

  1. 脚を広げた時に太ももやお尻など、太もものしわの数が左右非対称
  2. 両足を伸ばした時、左右の長さが異なる(脱臼している足のほうが短くなります)
  3. オムツ換えの時などに股関節を動かすと、ポキポキとか、クリッといった音が鳴る
  4. 両膝を立てて寝かせた時、長さが違う(脱臼しているひざのほうが低くなります)
  5. 向き癖がある
  6. 足の動きが硬い
  7. 11月~3月の寒い時期に生まれた
  8. 足を引きずったり、歩き始めが遅い
  9. 逆子(胎盤位)で生まれた
  10. 近親者に先天性股関節脱臼の方がいる

こうした項目がいくつか当てはまった時は、先天性股関節脱臼を疑ってみたほうがよさそうです。

肢や股関節だけではなく、全身のチェックも

股関節が脱臼していると、体全体のバランスも悪くなります。先天性股関節脱臼が見られるような場合には、体の左右のバランスが崩れることで筋肉の使い方にも影響が出るため、背骨が歪んで見えたり、体の左右が非対象になったりします。また、頭を傾けているように見えることもあります。

こういったことが見られたら、股関節脱臼を疑ってもよいかもしれません。下半身ばかりだけではなく、全体のバランスも注意してチェックしてみてください。

先天性股関節脱臼の原因

赤ちゃんの自然な脚の状態を妨げる

基本的に乳幼児は足がO脚気味になっているものです。仰向けに寝ている赤ちゃんや幼児を見てみると、蛙のように膝が外側に開いていることが分かると思います。このO脚に関しては、成長過程で徐々にまっすぐに戻っていくので心配する必要はありません。

ということで、赤ちゃんのO脚は治す必要がありませんし、また、O脚の姿勢がとれないような状態を強いられてしまうと、結果として赤ちゃんの自然な脚の状態を妨げることとなってしまうのです。

ベビースリングの中で脚を伸ばしたままにする

布をハンモックのような形にして、赤ちゃんを包み込むようにして抱いたり背負ったりできるベビースリングは、多くのお母さんたちが利用しています。

赤ちゃんの股関節にとって、歩き出す前の生後3か月くらいまでは股を開いたM字の状態がよいので、スリングを使う際に、横抱きのような脚を伸ばしたまま状態にしておくと、股関節脱臼になる確率が高くなります。

スリングだけではなく、おくるみなどで脚を伸ばした状態をで固定することも、脱臼の原因となりえます。

オムツの誤った当て方

オムツの当て方で、赤ちゃんの下肢を伸ばしたままオムツを当ててしまうことで、赤ちゃんの下肢の自由な動きを妨げると、脱臼になりやすいようです。

片方だけを向く向き癖

赤ちゃんの顔がいつも顔が同じ方向ばかりを向いている向き癖は、股関節脱臼を起こす重要な因子と考えられます。

片方に顔を向けていると、顔が向いている側の反対の股関節の開きが悪くなる傾向にあるようです。実際、片脚のみ脱臼する片側性脱臼では、多くは顔を向けている側の反対の股関節が脱臼しています。

足をまっすぐ伸ばす

先述したように、赤ちゃん本来のの自然な姿勢は、仰向けに寝かせた時にカエルのような両膝と股関節が十分に曲がったM字の姿勢です。しかし、おむつを交換する時などに、それを無理にまっすぐ伸ばしてしまうことで脱臼を誘発してしまうことがあります。

先天性股関節脱臼の治療法

治療開始はできるだけ早期に

乳児検診などで先天性股関節脱臼が見つかったり、日常の観察で疑わしいと思われる場合は、整形外科へ連れていきましょう。医師の診断・指導のもと、正しい治療を行うことが重要ですから、まずは病院へ連れていきましょう。

赤ちゃんがハイハイをするような時期にまで先天性股関節脱臼に気がつかなかったり放置してしまったりすると、その後に治療を開始しても時間がかかってしまうようです。むしろ、まだ寝返りが打てないような時期に治療をしてあげると、治療効果は高く、正常な発育へと導いてあげられるようになっているようです。

リーメンビューゲルでの治療

乳児期に股関節脱臼が発見された場合に採用されるのが、リーメンビューゲルというバンド状の装具による療法です。これは日本には昭和30年代後半に、チェコスロバキアから導入された装具です。

発見されるのが一番多い生後3~4か月頃から装着します。生後6か月までに治療を始めることができたら、80%以上がこの治療法治すことができるようです。

リーメンビューゲルは股関節を曲げた状態で脚を固定しますが、装具をつけたままでもある程度は脚を動かすことができます。

牽引治療

リーメンビューゲルによる整復でも治らず、生後7ケ月を超えてしまったというような場合には、牽引治療が行われます。これは、脚を数段階に分けて、時間をかけながら引っ張り、徐々に正しい位置に動かしていくという療法で、入院して治療することになります。

ゆっくりと時間をかけて股関節の位置を正しい状態へと導いていくため、治療にかかる日数は増えてしまいますが、一旦治療を終えてしまうと元に戻りにくく、また観血的治療を行わず安全に治療をできるという利点があります。

整復手術

リーメンビューゲルや牽引治療で治すことができなかったり、45歳を過ぎてから発見されたような場合に多く行われる治療が、手術による整復です。

その内容は、股関節を正しい位置に収めるための整復を邪魔する組織を除去し、臼蓋の中に正しく脚の骨を収め、安定させるというものです。

先天性股関節脱臼の予防法

赤ちゃんの自然な姿勢を妨げない

先天性股関節脱臼の一番の予防法は、仰向けで寝ている時に両足と股関節でM字に開脚した、カエルのような格好となる、赤ちゃん本来の自然な姿勢を妨げないことです。

この自然な姿勢は、赤ちゃんにとっても楽な姿勢といえます。歩き始めるまでは、このM字開脚を基本に自由な運動をさせてあげましょう。

足を締め付けるようにしない

脚が伸ばされてしまうような、両足を外から締め付けるようなきついオムツや洋服はやめるようにし、サイズにゆとりのあるものを使用しましょう。

オムツの当て方にも注意が必要

オムツの当て方は、生後すぐから注意が必要です。オムツは、股関節を自由に開けることができないような当て方ではなく、股を開いた状態で当てるようにしましょう。

「コアラ抱っこ」のススメ

赤ちゃんを抱く時は、正面から抱く「コアラ抱っこ」をしましょう。コアラ抱っこは、両膝と股関節が曲がったM字開脚でお母さんやお父さんの胸にしがみつく形になり、ちょうどコアラが木につかまった形になります。

両脚を束ねるような抱き方はNG。赤ちゃんの股に手を入れる抱き方がベストです。

また、抱っこひもを使う場合は、「正面抱き用の抱っこひも」がベスト。このタイプは、赤ちゃんの自然な姿勢を崩さない両膝と両股関節がM字に曲がった形で使うことができます。

ベビースリングの使い方の注意点

先天性股関節脱臼の危険性があるとされているベビースリングですが、股関節脱臼を防止するためには。生後1か月以降での使用が望ましいでしょう。

また、生後1か月以降でも、3か月未満の赤ちゃんでは、横抱きで脚を伸ばした形で使用するのは、股関節脱臼になる恐れがあり、あまりよくありません。

使用する場合は、赤ちゃんを縦抱きにし、股関節を広げてお母さんのおなかをまたぐような形にし、膝は曲げた状態で、股関節を動かせる状態でスリングの中に入れてあげましょう。また、赤ちゃんの首は3ヶ月から5ヶ月頃に座ってくるということなので、この時期には頭がグラグラしないように固定してあげましょう。

向き癖の矯正

赤ちゃんの顔が一方の方向にばかり向くような、向き癖がついている場合は、向いている方向と反対側の脚が立て膝姿勢にならずに、外側に開脚するようにしてあげましょう。よく行われる方法は、タオルなどを丸めて、赤ちゃんの背中に当てがってあげて、向きを変える方法です。ママが反対側から呼び掛けるのもいいですよ。赤ちゃんに合った方法で、向き癖が治る環境を工夫して作ってあげましょう

先天性股関節脱臼の後遺症

変形性股関節症の多くは先天性股関節脱臼の後遺症

変形性股関節症とは、骨盤と大腿骨のつなぎ目である股関節を形成している軟骨が年齢とともに摩耗して質が落ち、形が変わったりする病気です。

股関節に痛みを感じますが、初期の間は短期間で痛みは消えます。しかし、進行してくると痛みを感じる時間が徐々に長くなって、最後には歩行も困難になります。股関節が曲がらないと、しゃがむ動作が困難になるため、そのような動作をともなうこと(足の爪を切るなど)ができなくなります。

この変形性股関節症の原因の多くは、先天性股関節脱臼の後遺症です。そのため大人の女性の発症が多く、日本では約70~80%が先天性股関節脱臼だった方が占めています。

治療法としては、股関節にかかる負担を減らすために筋力をつけたり、体重を減らすなどの保存的療法をまずとり、それでもよくならない場合は手術をすることになります。

変形性関節症の予防ために

先天性股関節脱臼の後遺症や、臼蓋形成不全のために、変形性股関節症を発症してしまうことを防ぐためには、先天性股関節脱臼の整復後も注意深く観察していく必要があるでしょう。

症状が出て病院で変形性股関節症と診断されたら、痛みがひどくなる前に股関節のストレッチで痛みを和らげ、股関節が動く範囲を広げていきましょう。また、関節に負担がかからないようにダイエットすることも予防になるでしょう。

まとめ

 

先天性股関節脱臼は、先天性という言葉がついているものの、本当に生まれながらに脱臼しているケースは非常に少なく、生まれてから後の要因によって発症するということでした。

そしてそのまま放置しておくと、成長につれて歩いたりしゃがんだり、立ったり座ったりという、普段何気なくしている動作にも影響が出てくるばかりか、大人になってから変形性股関節症を発症してくることもあるということもわかりました。

お子さんの先天性股関節脱臼を防ぐために、これまでのオムツの当て方、抱っこの仕方など日常の動作を見直し、また、下半身を中心に注意深く観察をして、早期発見に努めてください。