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臍帯血って?幹細胞移植とはどんな治療に使われるのか?血液ガスを測定する目的や保存や移植について詳しく紹介します!

臍帯血(さいたいけつ)は、「赤ちゃんからのいのちのおくりもの」とも言われ、出産直後にしか採取できない、へその緒にある血液です。それを用いて治療が難しい病気で苦しんでいる人を救えるかもしれないのです。臍帯血について解説します。



臍帯血について

臍帯血とは

臍帯血(さいたいけつ)とは、お腹の中の赤ちゃんとお母さんをつなぐへその緒(臍帯)に含まれている血液です。臍帯血には、体のさまざまな細胞のもとになる幹細胞がたくさん含まれており、そのひとつに血液をつくるもとになる造血幹細胞があります。

白血病、再生不良性貧血など血液の病気に対して、臍帯血に含まれる造血幹細胞を移植して治療ができるケースがあるのです。全国で年間1万人が重い血液疾患と診断されているという報告があります。その治療に臍帯血を役立てることができるかもしれません。

臍帯血の血液型は?

お母さんの血液と赤ちゃんの血液は、通常混じらないしくみになっています。そのため、赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいますが、へその緒の中にある臍帯血は赤ちゃんの血液なのです。しかし、赤ちゃんは免疫が未熟なため、正確な血液型検査ができません。簡易的な検査で血液型検査ができますが、大きくなってから実は違う血液型だったという話をよく聞くのはこのためです。

何らかの理由で輸血が必要になった場合は、その都度血液型検査を行いますので血液型を知らなくても問題はありませんが、もし知りたい場合は1歳を過ぎてから検査を行った方がよいということです。

臍帯血の血液ガス測定について

血液ガス測定の目的

生まれてすぐ医師や助産師さんが赤ちゃんの状態を確認しますが、赤ちゃんの元気がない、泣かない、自力で呼吸をしないなどの状態がみられた場合それを新生児仮死といいます。原因は、お母さんの持病、赤ちゃんの病気、胎盤早期剥離などの胎盤の問題、へその緒が圧迫されていて血液が循環していなかった等さまざまです。

新生児仮死と判断された場合、臍帯血の血液ガス測定で低いかどうかを調べることにより、赤ちゃんの呼吸・循環不全を判断し、その後の治療の方向を決めていくことになります。

血液ガス測定方法

へその緒の10~20cmの長さにクリップで止め、臍帯動脈血を少量取り、血液ガス分析装置という機械で測定を行います。pHや血中の二酸化炭素と酸素のガス分圧を測定することができます。

血液ガス測定基準値は?

血液ガス測定は、体に必要な酸素が足りているか、肺からの二酸化炭素の排泄ができているかという呼吸に関してだけでなく、腎臓などの代謝が正常に行われているかの判断ができます。

その正常値は以下の通りです。

水素イオン濃度 pH:7.35~7.45

酸素分圧 PaO2:85~95mmHg

二酸化炭素分圧 PaCO2:35~45mmHg

酸素飽和度 SaO2:93%以上

分娩直後の赤ちゃんの場合は、血液ガス分析結果が不良であれば分娩時に血液中の酸素が足りない低酸素血症の可能性があると判断し、適切な管理を行うことになります。

臍帯血は何に使うの?

白血病などの治療

骨の中心部にある骨髄のなかには、血液をつくるはたらきをする造血幹細胞があります。この造血幹細胞が働かなくなる病気が白血病、再生不良性貧血、先天性免疫不全症などです。治療法は、薬物療法かドナーから採取した造血幹細胞を移植するしかありません。

骨髄移植は、病気の造血幹細胞を正常な造血幹細胞に置き換える根治の可能性が高い治療法です。しかし、移植するには白血球の型が合う人を探さなければならず、その確率は数百~数万分の1しかありません。

臍帯血移植は骨髄移植に比べ、適合する臍帯血をみつけやすい、すでに保存されているので速やかに移植できるなどの特徴があります。

子供の将来のために保存

臍帯血移植について、アメリカでは血液疾患だけではなく、脳性まひなどの脳障害、I型糖尿病の治療に対して臨床試験が始まっています。また、臍帯血の中に含まれる幹細胞を使った再生医療が注目を浴びています。

万一子供が血液の病気にかかったときのために、あるいは将来研究が進んでがんなどほかの病気の治療に用いられるかもしれない、など将来の子供のために臍帯血を保存する方もいらっしゃいます。

臍帯血バンクについて

臍帯血バンクとは

臍帯血バンクとは、白血病などの患者さんへ造血幹細胞を提供してくれるドナーを募り、ドナーの臍帯血を冷凍保存、検査、データ管理をして、移植を希望する患者さんへ届けているところです。臍帯血を採取するのは、臍帯血バンクと提携している分娩を扱う産婦人科で行われます。日本国内には、十数ヶ所の臍帯血バンクがあります。

臍帯血を提出するには

臍帯血を提出するまでの流れは以下の手順になります。臍帯血を採取、提出できるのは臍帯血バンクと契約した技術と設備をもつ病院に限られます。

  1. 産婦人科医師から臍帯血に関する説明を受け、提供することを決めたら、同意書に記入して医師に提出します。
  2. 出産後、赤ちゃんと臍帯が切り離された後で、臍帯と胎盤に残っている血液を採取します。
  3. 退院前に、感染症などがないかお母さんの血液検査を行います。移植する患者さんの安全確保が目的です。
  4. 採取した臍帯血の必要な成分を濃縮して196度の液体窒素の中に保存します。
  5. 約6ヵ月後、臍帯血バンクからアンケートが送られます。より安全に移植を行うために、お母さんと赤ちゃんの健康状態を確認するものです。アンケートを記入、返送します。
  6. アンケートの結果、基準を満たした臍帯血は移植用に登録されます。
  7. 移植を希望する患者さんが現れた時に、患者さんに合う細胞を移植病院に送り、解凍してすぐ治療に用いられます。

なお、分娩状況によっては臍帯血を採取できなかったり、検査の結果移植できないと判明される場合があります。

臍帯血の採取方法

臍帯血の採取は、お母さん、赤ちゃんに痛みなどの負担はありませんし、分娩の進行にも影響することなく安全に行われます。赤ちゃんは生まれるとすぐに臍帯(へその緒)から切り離されます。この時はまだ臍帯と胎盤はお母さんの体内にありますが、間もなく後産でお母さんの体外に排出されます。

臍帯血の採取は、胎盤が体内に残っているうちに行う方法と排出されてから行う方法があります。前者の場合は、専用のバッグを使用し臍帯表面の血管に針を刺して採取しますが、痛みはありません。後者の場合は、体外に排出された胎盤と臍帯に残っている血液を採取します。

臍帯血バンクの比較

公的バンク

臍帯血の公的バンクは、国からの助成金および健康保険金からの費用によって維持されています。献血で提供される輸血用血液のように、妊婦さんは臍帯血を無償で提供し、臍帯血バンクに登録され、必要な患者さんの治療に利用されます。提供者の費用負担はありません。

現在は、「日本赤十字社」が日本で唯一の造血幹細胞提供支援機関に指定されています。平成24年(2012年)移植に用いる造血幹細胞に関する法律が成立したのに伴い、日本さい帯血バンクネットワークから日本赤十字社へ、各地にある臍帯血バンクの情報共有業務などを引き継ぎました。各臍帯血バンクのもと実際に臍帯血の採取を行う提携産科施設が登録されており、全国で100件ほどになります。

民間バンク

一方、民間バンクは臍帯血を保管することを目的とした民間会社です。公的バンクとの大きな違いは、保管した臍帯血の使用を提供者本人またはその家族に限定している点と、依頼者が必要な費用をすべて負担する点です。民間企業の経営であり、本人のための保管ですので、初期費用、10年間の保管費用、更新料などが数十万円ほどかかります。

民間バンクにより異なりますが、臍帯血の採取協力病院を400以上と多数有しており、将来必要になった時にいつでも自分の臍帯血を使用できる体制にあるそうです。現在は主に白血病などの血液疾患が対象ですが、将来は研究が進みそれ以外の病気や再生医療への使用が期待されています。お子さんの万一のために備えて利用する方がいらっしゃるようです。

臍帯血の保存について

保存のメリット

白血病などの血液の難病には、骨髄移植がもっとも有効な治療法です。骨髄移植には白血球の型が合うことが条件で、それを見つけるのは大変困難です。臍帯血は移植可能な白血球の型の範囲が広いので、より多くの造血幹細胞が保管されていれば、型の合う人を見つける確率も上がり、短い期間で探すことができます。

また、臍帯血は出産直後にへその緒と胎盤から採取するのでお母さんにも赤ちゃんにも負担がかかりませんし、採取後の諸手続きをするだけで完了します。同様の目的で骨髄バンクがありますが、こちらは献血ルーム等でドナー登録し、ドナーに選ばれた際には、骨髄採取または末梢血幹細胞採取のために、3拍4日から6泊7日ほどの入院が必要です。

保存のデメリット

臍帯血は、骨髄移植に比べて赤血球、白血球、血小板などの血液細胞が十分な数に増えるまで時間がかかるため、感染症や出血に対する管理が重要になります。また、赤ちゃんから採取できる臍帯血の量が少ないため、体重の重い大人への移植は難しい場合があります。

第三者の骨髄を移植すると拒絶反応が起きる場合があります。本人のものであれば拒絶反応が起こる可能性はかなり低いと言われていますが、公的バンクは将来自分が病気になったからといって自分の臍帯血は戻ってきません。

民間バンクであれば提供者自身のための保存ですので、万一の時はすぐに対応できます。ただし、民間バンクは企業ですので破たんする可能性もあり、実際の保管体制など詳細を国が把握していない等の問題もあります。将来病気になるかどうかは誰にもわかりません。民間バンクを希望する場合は、慎重に選択してください。

保存期間

臍帯血を採取した後、−196℃の液体窒素の中に保管するので基本的に細胞の品質に変化がないとされています。公的バンクでは、採取から10年間移植に使用するということです。私的バンクでは、10年間の保存を基本として契約し、それ以降は5年ごと、10年ごとに更新するか否かの契約更新をするようです。

臍帯血移植について

臍帯血移植が対象となる病気

臍帯血移植は、白血病など骨髄移植で治療されている病気と同じ病気が対象になります。急性白血病、慢性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、再生不良性貧血、先天性免疫不全症、先天性代謝異常症などです。中にはまだ症例数が少なく臍帯血移植が必ずしも有効であるとは言えない病気もあります。

●白血病:血液のガンと言われ、正常な血液が造られなくなる病気です。通常の抗がん剤治療では効果が見られないものに臍帯血移植が検討されます。

●再生不良性貧血:血液を造る機能が低下し、重度の貧血などの症状があらわれる病気です。臍帯血移植では良好な結果が得られていないため、ほかの治療が優先されています。

●先天性免疫不全症:生まれつき免疫機能が低下している病気で、さまざまな感染症に繰り返しかかってしまいます。この病気は乳幼児が対象であるため、臍帯血移植が適しています。

移植を受けるためには

主治医により、臍帯血移植が妥当な治療法であると判断された上で、まずはインターネットで適合する臍帯血を検索します。適合する臍帯血が見つかった場合、医師から臍帯血バンクに連絡します。臍帯血バンクでも、適切であると判断されれば、臍帯血が凍結された状態で病院に運ばれてきて、点滴により移植が行われます。

移植の方法

移植を受ける患者さんは、臍帯血移植の数週間前から無菌室で薬の投与や放射線の照射を受け移植の準備をはじめます。冷凍されたまま運ばれてきた臍帯血を移植病院で解凍し、患者さんの静脈から点滴され移植が完了します。

移植後について

約3~4週間で移植された臍帯血は健康な血液を造りはじめますが、免疫反応や感染症などの合併症を起こす可能性があります。そのため移植後も無菌室で合併症に注意して管理されます。

合併症は、移植された血液細胞を異物とみなし拒絶反応を起こしたり、サイトメガロウイルス感染症や水痘、帯状疱疹などの感染症を発症することがあります。また、移植前に行った抗がん剤や放射線治療の影響で、その副作用が出たり、一般的に妊娠ができなくなってしまいます。

順調な患者さんで2~3ヵ月で退院することができます。しかしながら、極めて悪性度の高い白血病などに対して行った場合は移植後に再発することもあります。

まとめ

臍帯血によって白血病など重い病気の患者さんの治療に貢献できるかもしれません。将来は研究が進み、さらに治療の幅が広がる可能性もあります。臍帯血は出産の時にしか採取できませんので、臍帯血の採取方法や預け先の違いなどをよく知った上で、出産前のお父さん、お母さんはぜひ一度検討してくださいね。