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ウェルニッケ脳症って?ビタミンの投与で改善する認知症のようなもの!10の原因や症状を知り、早期治療や予防をしよう!

ウェルニッケ脳症という病気を知っていますか?ウェルニッケ脳症は認知症に良く似た症状をきたす病気で、その原因はいろいろありますが、誰にでも起こり得る病気です。早期に治療を開始しないと死に至ることもあるためまずは予防をすることが肝心ですが、ここでは主な症状や原因、治療法についてもお話ししたいと思います。



ウェルニッケ脳症って?

ウェルニッケ脳症は「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」とも呼ばれ、急性期をウェルニッケ脳症、慢性期をコルサコフ症候群と呼びます。

ウェルニッケ失語症というものもありますが、これとは別物です。ウェルニッケ失語症とは、脳のウェルニッケ野に障害が起こると発症する失語症の一つになります。流暢に会話ができるのですが、言い間違いが多かったり、相手が理解できないことを話したりすることが特徴の失語症です。

ウェルニッケ脳症は、脳の一部が委縮したり拡大したりすることによって発症する病気で、様々な障害が起こり、後遺症を残すこともあります。

ウェルニッケ脳症の原因

ビタミンb1の欠乏

ビタミンb1はチアミンとも呼ばれており、糖質をエネルギーにかえるときに必要な栄養素ですが、日本人は主食がお米ですから必然とビタミンb1の消費量が多くなりますが、このビタミンb1が不足することで様々な不調を引き起こします。神経障害を起こしやすくなることが報告されており「脚気」や「ウェルニッケ脳症」がその代表です。

ウェルニッケ脳症は、神経の中でも「中枢神経」の障害が強い場合に起こる症状です。この症状が進むと、アルツハイマー病に似たような症状を起こすこともあるため、普段からビタミンb1を多く含む食事を摂ることを心がけるようにしましょう。ビタミンb1は、豚肉やウナギのかば焼き、そばなどに多く含まれます。

アルコールの影響

ウェルニッケ脳症の原因はビタミンb1の欠乏だとお話ししましたが、アルコールとの関係も深いようです。アルコール依存症の患者は

  • 食事を摂らずにアルコールを摂取し栄養が不足する。
  • アルコールにより下痢を起こし、ビタミンb1の吸収不良が起こる。
  • アルコールによりビタミンb1の活性化が低下する。
  • アルコールを分解するためにビタミンb1が使われる

などのことから、ビタミンb1が欠乏してしまい、脳内での糖質代謝が上手く行われなくなります。脳症を起こすのです。アルコールとは上手にお付き合いし、栄養不足にならないように気をつけなければいけません。

飢餓によるもの

現在の日本では、飢餓による栄養障害を起こすことは稀なことだと思いますが、十分な食事を摂ることの出来ない貧しい国や家庭環境での、飢餓によるウェルニッケ脳症の発症も報告されています。十分な食事を摂れないことから栄養失調になり、ビタミンb1が不足してしまうのです。

似たようなもので、過度のダイエットによる栄養不足によるウェルニッケ脳症の報告もされています。過度なダイエットは飢餓状態と同じようなものですから気をつけなくてはなりません。無理なダイエットはせず、栄養バランスの整った食事を摂ることがとても大切です。

妊娠悪阻(つわり)

妊娠すると、悪阻のない人もいれば入院が必要なほどの重度の悪阻を起こす人もいます。昔は悪阻で命を落とした人もいるくらいです。現在は点滴などによる治療が可能ですが、治療をしてもなかなか回復せず、ウェルニッケ脳症を発症してしまう場合もあるのです。これは、適切な治療を行うことで回避することができます。

重度の悪阻で水さえも飲むことができず、栄養不足になることでビタミンb1が欠乏し、ウェルニッケ脳症を引き起こしてしまうのですが、このような場合はブドウ糖の輸液だけではなく、ビタミンb1の入っている点滴治療を早期に行うことが必要不可欠なのだそうです。

栄養の偏り

今は、24時間開いているコンビニもある便利な世の中ですよね。お湯を入れて3分待てば食事もできてしまいます。カップラーメンなどは、手軽で安価ですし、忙しい方や節約中の方などは1日の食事をカップラーメンだけで済ませている…なんていう人もいるのではないでしょうか。

しかし、このような食事を続けていると栄養が偏り身体に様々な影響を及ぼします。ビタミンb1が欠乏してしまうとウェルニッケ脳症を引き起こす場合もあります。忙しかったり、どうしても節約しなくてはならない…という場合でも、出来るだけ自炊したり栄養バランスの整った食事をするようにしましょう。

ウェルニッケ脳症の診断基準や診断方法

MRIによる検査

画像検査では、頭部MRIにて

  • 脳室の拡大
  • 皮質の委縮
  • 海馬の委縮

などが見られるとようです。MRIのほかにもいくつかの検査による診断方法がありますが、ウェルニッケ脳症の患者さんは上記のような所見が顕著に表れる場合が多いそうです。

MRIを撮る際に時間を要するため、疑わしい症状がある場合は、頭部CTで外傷がないが確認をし手遅れにならないためにも早急にビタミンb1の大量投与を行わなくてはなりません。

血液検査

病歴や食生活などの情報や症状を確認し、血液検査を行いますが、この血液検査では「ビタミンb1(チアミン)値」の測定をします。正常値を下回る場合はウェルニッケ脳症の疑いがあると認められます。多くの場合はビタミンb1の点滴により回復するようですが、中には後遺症が残る患者さんもいます。

ウェルニッケの後遺症とは「コルサコフ症候群」というものです。コルサコフ症候群の症状や原因については後ほど詳しくお話ししますが、ウェルニッケ脳症の場合は、早期に治療を開始することがとても重要であるということです。

血糖値検査

ウェルニッケ脳症には、他にも似たような疾患がいくつかあるため、治療をするためにはそのような疾患の可能性を排除する必要があります。低血糖の症状もウェルニッケ脳症の症状と似ているため、血糖値測定をして確認をする必要があります。

低血糖の場合はブドウ糖の点滴が必要になりますが、ウェルニッケ脳症の場合はブドウ糖の点滴だけでは症状がよくなりませんから、しっかりとした診断が必要なのです。反対に、低血糖の患者さんにビタミンb1の点滴をしても症状は良くなりません。

ウェルニッケ脳症の症状

眼球運動障害(急性期)

急性期の主な症状の一つとして眼球運動障害があります。眼球運動障害は、

  • 外側に目を動かすことができない(外直筋麻痺)
  • より目になる(内斜視)

などがあります。

少し回復してくると

  • 眼球が自動的に動揺する(水平眼振)
  • 物が重なって見える(重視)
  • めまい

などが現れるようになります。

これらの症状に気が付いた場合は、すぐに病院へ行って診察を受けましょう。受診の際は、症状をしっかりと医師に伝えることを忘れないようにしましょう。

運動失調(急性期)

小脳は、直立や歩行するときのバランスをとる役割や、大脳からの運動指令を各部位に伝達する役割を担っています。運動失調は、この「小脳」に障害が起こることによって現れる症状です。

  • ふらふらする
  • 歩行が不安定
  • つかまり立ちでないと立てない
  • 倒れてしまう
  • 手足を思うように動かせない

などの症状が急性に出現します。

アルコール依存症の方は、アルコールのせいでフラフラしたり歩行が不安定になってると思ってしまい、病気に気づかず放置してしまうこともあるかもしれません。早急に治療を開始しなければ死に至ることもありますので、少しでも「おかしいな」「いつもと違うな」と思った場合には、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。

意識障害(急性期)

意識障害は、突然起きるのがウェルニッケ脳症の特徴です。意識障害の程度は様々で、軽いものから昏睡に至るものまであります。症状としては

・無意欲

・注意力散漫

・傾眠傾向(すぐに意識が混濁してしまう)

・せん妄

・錯乱

・昏睡

などがあります。

全ての症状が現れるという訳ではなく、せん妄や錯乱状態の身が現れる場合もあるようです。上記の症状だけを見ると、うつ病や認知症と似ているため精神科や心療内科の領域だと思ってしまうかもしれませんが、ウェルニッケ脳症の場合はMRIなどの設備のある病院で診察する必要があります。

記憶力障害(慢性期)

慢性期になると、上記のような急性期の症状とは違った症状が現れます。慢性期では

・見当識障害

・健忘

・記銘力障害

などの症状が現れます。

見当識障害とは、自分が今どこにいるのか、今日はいつなのか…自分の置かれている状況や場所を正しく認識できない症状のことを言います。「何月何日?」や「ここはどこ?」という質問に答えられなくなります。

健忘とは、字の通り「忘れてしまうこと」です。最近のことや昔の出来事を思い出せなかったり、すっかり忘れてしまうと言った症状です。

記銘力障害とは新しい情報を記憶する能力が低下してしまう障害です。「忘れてしまう」のではなく「覚えられない」といえばわかりやすいでしょうか?機械の操作を覚えられないといった症状がこれに当てはまります。

コルサコフ症候群

コルサコフ症候群とは、ウェルニッケ脳症の後遺症のことです。ウェルニッケ脳症で命が助かった方でも、約8割の方にこの後遺症が残ると言われています。コルサコフ症候群は健忘を主症状とするもので、記憶力の低下が顕著に見られます。

原因や症状についてはこの後詳しくお話ししますが、ウェルニッケ・コルサコフ症候群と言われるだけあって、ウェルニッケ脳症とは切っても切り離せないものとなっています。重症の場合は認知症と間違われるケースもある病気です。

コルサコフ症候群って?

ウェルニッケ脳症との関係

先ほど、ウェルニッケ脳症の方の約8割の方にコルサコフ症候群が見られるとお話ししましたが、これはウェルニッケ脳症の「慢性期」であるいうことです。ウェルニッケ脳症で起こった症状が慢性化して残ってしまうのです。

しかし、コルサコフ症候群の発症はウェルニッケ脳症によるものだけではないようで、低栄養や飲酒によるけいれん発作、アルコール依存症などが引き金となる場合もあると言われています。

原因

ウェルニッケ脳症のほかにも、震戦せん妄の重度の発作が原因となる場合もあります。また、頭部外傷・脳卒中・脳出血・脳腫瘍などが原因となる場合もあります。

コルサコフ症候群の検査では、アルコールの飲酒歴などがとても重要になるようですので、アルコールとのかかわりも非常に強いものだと言われています。

症状・治療

症状には4つの特徴があります。(コルサコフ症候群4兆候)

1、見当識障害

2、作話

3、記銘力低下

4、健忘

これらの症状が主症状となります。

頭部外傷や脳出血の場合は、その治療を適切に行うことによって改善するとされていますが、ウェルニッケ脳症が原因で発症した場合は、良好な回復が期待できないと言われています。約25%の患者さんは施設でのケアやリハビリが必要になります。改善までに長期を要する場合もあるのだそうです。

ウェルニッケ脳症の治療法や対策

ビタミンb1の投与

血液検査でビタミン値の測定をしますが、結果が出るまでには時間がかかってしまいますので、結果が出る前にビタミンb1(チアミン)の投与を開始します。治療が早ければ早いほど効果が期待できるようなので、気がついたら早い段階で病院へ行き治療を開始しましょう。

急性期ではビタミンb1の点滴治療が行われることが一般的ですが、他にもビタミンb群の内服治療をすることもあるようです。

断酒

アルコールの長期摂取や大量摂取などによりビタミンb1が不足してしまうため、治療のためには断酒しましょう。ウェルニッケ脳症にならなくとも、アルコールは末梢神経障害を起こすこともあるため、知覚障害を起こす可能性もあるのです。

アルコール依存症ではなくても、普段から飲む量には注意し、ビタミンb1が不足しないように気をつけましょう。

食生活の改善

子供のころは、お母さんが栄養バランスの整った食事を作ってくれましたよね。しかし大人になっていざ自分で食事を作るとなると大変なものです。簡単に済ませようとしてコンビニやカップラーメンなどに頼ったり、痩せたい一心で食事を摂らなかったり…。

このような生活を続けていると、ビタミンB1不足になり、ウェルニッケ脳症を発症してしまうかもしれません。普段の食生活を改善し、自分の体に必要な栄養素をしっかり摂るように心がけましょう。一人で食べるより、誰かと食べることで食事も楽しくなります。特にお酒をよく飲む人には気を付けてほしい課題です。

看護やリハビリについて

リハビリと聞くと、体を動かすことを想像する方が多いかもしれませんが、記憶障害などもリハビリによって回復することがあります。例えば、覚えられないことはメモを取るようにして、そのメモを何度も見直す習慣をつけるなどのリハビリが行われます。

アルコール依存症の方は、その治療も必要になります。入院加療が一般的なようですが、適切な看護やリハビリテーションを行えばアルコール依存症を治すことができ、そのような治療を行っている病院は多くあります。

まとめ

ウェルニッケ脳症は、生活習慣の改善で予防することができる病気です。楽しいことや美味しいものがたくさんある今の世の中で生活習慣は乱れてしまいがちだと思いますが、食生活の改善やアルコールの摂りすぎに気を付けることで、病気にならないカラダを手にすることもできるのです。

ウェルニッケ脳症はあまり聞きなれない病気ですが、誰でも発症しうるとても身近な病気です。病気になってしまっては、楽しめることも楽しめなくなってしまいます。しっかり予防して、健康な体で人生を楽しみましょう。